手伝う代わりに、ここに住みます。 sec#87
僕がこの家に来たのは、住むところを探していたからだ。国府津で人を紹介してもらう相談をしていたとき、二つ提案された。ひとつは紹介の数珠つなぎでホームステイをすること。もうひとつが、杉山さんが買った駅前の古民家の改修を、住み込みで手伝うことだった。
家は国府津駅から徒歩三分にある。杉山さんが宿にするつもりで買った空き家だ。築百年ほどと聞いているが、壁は全面が石膏ボードで覆われている。
二月の初日、一月まで何もしていなくて、流石にそろそろ始めないと、と杉山さんが宣言して、その日から手をつけた。畳も障子も傷みがひどく、再利用は難しそうだった。杉山さんと相談して処分することにした。軽トラに畳を積み上げ、ロープで縛って、小田原のゴミ処分場まで運ぶ。処分費は杉山さんが払ってくれた。
解体は主に僕がやる。ときどき杉山さんが来て、やり方を教わりながら一緒に進める。ゴミ捨ては杉山さんの担当だ。小さくて狭い風呂は、相談してシャワールームにすることにした。腐った柱をどうするか分からず相談したときは、切って入れ替えるしかない、これは大工に頼まないと難しいかも、と言われた。杉山さんが東京で講演のある日は、僕一人で作業して、撮った写真を LINE で送る。
曽我のストックヤードでは、使えそうな古材を一本ずつ草の上に並べて採寸した。この家の什器に転用するためだ。何をもらうかはまだ決めていない。昼は杉山さんがくれた千円で、駅前の町中華に行ってラーメン定食を食べ、また解体に戻った。
僕が出しているのは改修の労働で、受け取っているのは居住だ。契約書はない。杉山さんは朽ちかけた建物に自分の資金を投じて、自分の労働と時間を注ぎ込む。直した場所が人に使われるかどうかは、直してみなければ分からない。最初のリスクは全部、杉山さんが引き受けている。
国府津の通りを歩くと、杉山さんが直した建物と、まだ誰も手をつけていない空き家が、隣り合っている。同じ通りに、動いている場所と止まっている場所がある。外壁の色が違う。窓の明るさが違う。
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版履歴
v1 · machine · 2026-07-20 06:46
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東光院では線香の匂いが残っていた。僕が相談の範囲について尋ねると、古井昇空さんは、葬儀だけでなく、一人暮らしの人の身元保証や、入退院のときの相談にも乗ると話した。ほとんど金を受け取れない葬儀があり、場合によっては寺の側が金を出すこともある。それでも、受け取る金額で対応を変えないという。[moment#754]
古井さんは続けた。「ただ昔だったら隣近所の人がしょうがね俺がやってやるよって言ってたものが、他ないんですよ、選択肢全部サービス化されてお金が介在するようになっている」。僕は古井さんの前で、その言葉を聞いていた。[moment#754]
東光院では、布施を受け取るとき、それを寺の収益ではなく活動原資、活動支援金だと説明するという。古井さんは「今回あなたから葬儀のときに30万円いただくかもしれないけど、その30万円は別の人に吐き出すことだってありますからね」と話した。受け取った人と、その金が使われる相手は、同じ人とは限らなかった。[moment#754]
葬儀で受け取る金、金を受け取れない葬儀、身元保証、入退院の相談。古井さんの話はその順に行き来した。線香の匂いの中で、僕は、寺に入ってきた金が別の人のところへ出ていくという説明を聞いた。[moment#754]